退職代行サービスを使わず退職する方法

昨年10月、退職代行サービス『モームリ』を運営する(株)アルバトロスが弁護士法違反の疑いで警視庁から家宅捜索を受けたというニュースが注目を集めました。そこで退職代行『モームリ』の問題から考えたことで、その問題点を解説しました。
家宅捜索を受けた理由は、弁護士資格を持たない『モームリ』が、報酬を得て法律事務を行なったり、弁護士に法律事務をあっせんし、事務手数料といった名目で紹介料を受け取っていたことが、弁護士法に違反する「非弁行為」とされたからです。
そして先日、『モームリ』の運営会社社長が警視庁により逮捕されたことが報道されました。退職代行サービスは、ブラック企業を辞めたくても辞められない人のニーズから生まれたサービスですが、今後はこれを使って退職する人は減っていくと予想されます。
では、これからはブラックな職場を辞められなくなるのかというと、そんなことはありません。退職代行サービスを使わずとも簡単かつ合法的に退職できます。
退職代行を使わず退職する方法
退職代行サービスを使わずとも、以下のやり方で合法的に退職できます。注意点も説明します。
1.民法の規定を利用する
民法第627条の規定を使えば、正社員(期間の定めのない雇用)であれば、退職の意思を伝えてから2週間経過すれば法的には退職が成立します。
たとえば就業規則で、退職の意思表示が「3ヶ月前」「社長の承認が必要」などと定められていても、民法の規定である「2週間」が優先されるので、就業規則は無効です。 合法的・確実に退職するための具体的な手順は以下の通りです。外部のサービスに頼らなくても自分1人でできます。
2. 退職の意思表示を行う
まず最初に退職届を提出します。口頭ではなく、必ず書面で提出します。退職理由は「一身上の理由」と記し、提出日と退職希望日(2週間後以降の日)を明記します。
ここで注意したいのは「退職願」ではなく「退職届」を提出することです。この2つの違いがわかっていない人が多いですが、「退職願」はあくまで退職の ”お願い” なので会社が拒否することもできます。一方、「退職届」は退職の明確な意思表示になるので会社は受理を拒否できません。
「退職届」には ” 私(本名)は 一身上の都合により〇月〇日をもって貴社を退職します ” と簡潔に記します。具体的な退職理由やおわびの言葉などは一切不要です。また提出する退職届は自分用に必ず1枚コピーし保存しておきます。
3.退職届は内容証明郵便で送る
「退職届」を上司や会社人事部に手渡しすると握りつぶされたり無視されるリスクもあるので避け、内容証明郵便で会社に送ります。退職に関して上司と話をしたくない場合にも使えます。
メールでの提出も送信履歴が残るので有効ですが ” メールを見ていなかった ” と言い訳されトラブルになるケースもあるので内容証明郵便の利用を推奨します。これは「いつ退職の意思表示をしたか」の法的な証拠になります。とにかく 証拠を残す ことが大切です。
4.引き止めや拒否への対処法
退職届を会社に出してから2週間経てば雇用契約は自動的に終了します。退職は労働者の権利であり、会社の承諾がなくても成立します。もし会社が絶対に辞めさせないと言ってきたら、これは「在職強要」となり、労働基準法第5条(強制労働の禁止)となるので違法です。
同様に会社が ”損害賠償請求する” “懲戒解雇する” と言ってきても、多くの場合は法的根拠のない「在職強要」になるので違法です。通常の退職で会社に多大な損害が出るのは極めて稀であり、ただの脅しです。
また退職者への嫌がらせで離職票に「懲戒解雇」と記載してくる会社も実際にあります。この場合、失業手当の受給などで不利になり、職務上のキャリアに傷がつくことも懸念されます。
もし会社が発行した離職票の「具体的事情記載欄(事業主用)」が懲戒解雇となっていたら、ハローワークで「離職理由の異議申し立て」をすれば対処できます。詳細を知りたい方は、自己都合退職を会社都合にする方法をお読み下さい。
もし退職届を提出した後、会社から強引な引き止めや嫌がらせ(ヤメハラ)に遭った場合は、近隣の労働基準監督署に相談するとよいです。
5. 退職届を提出したら
最終出勤日までに業務の引継ぎをします。よくあるのは、会社が ”後任者がいない” という理由で引継ぎを妨害してくることです。この場合は、最終出勤日までに自分が今までやってきた業務や注意点などをマニュアル化して会社のPCに保存しておき、後任者にわかるようにしておくことです。
健康保険証や会社から貸与された備品は最終出勤日に返却し、私物も最終出勤日までに持ち帰ります。また離職票や源泉徴収票などの失業手当受給に必要な書類を自宅に送付するよう、会社に請求しましょう。
退職届の提出と同時に「残りの期間はすべて有給休暇を消化する」と会社に通告します。退職日までの期間に有給休暇を充てることは労働者の正当な権利です。有休を使えば、退職届提出後の2週間を一度も出社せずに過ごすことも可能です。
会社は退職する社員には時季変更権(有休を別日に振り替える権利)を実質的に行使できません。また会社と合意すれば、消化しきれず残った有給休暇を会社に買い取らせることもできます。
未払い残業代などがある場合
上記は、あくまで ” 辞めたいのに辞めさせてくれない会社を退職する方法 ” になります。もし退職時に未払い賃金(残業代)や、パワハラ・セクハラにより傷害を受けたり精神疾患を発症した場合は、会社に未払い賃金や損害賠償の請求を行う必要があります。
こうしたケースなら最初から弁護士に依頼したほうが良いです。全国的な弁護士法人には退職代行サービスを宣伝しているところも多く、単純な退職代行なら費用は数万円程度のところもあります。
弁護士に直接依頼するなら合法・確実だし、会社を訴えるときにも有利です(別途訴訟費用がかかりますが)。ユニオン(一般労働組合)も弁護士と同様に法律事務を行えますが、労働組合に加入すると一定期間は加入を継続せねばならず、退職問題の解決後にハイサヨウナラとはいかないです。
したがって、退職時に会社と何らかのトラブルを抱えており、会社に未払い賃金や損害賠償請求等をしたい場合は、初めから弁護士に依頼したほうが良いでしょう。


