学校と職場に共通する「いじめ」の背景構造 

最近、栃木県の高校や大分県の中学校内部で撮影された、いじめによる暴行動画がSNSで拡散され、動画拡散の是非をめぐり議論が発生しています。さらには熊本県の中学生による暴行動画も拡散されています。

これらを見ましたが、無抵抗な相手を一方的に叩きのめしており、誰も止めようともしていません。もはや暴行傷害事件で立件されるレベルだと思います。

いじめ防止対策推進法が施行されても、学校での「いじめ」はなくならず、いじめ認知件数も過去最高となっています。一方、学校と同様に職場でもパワハラ、セクハラ(性加害)等の「大人のいじめ」が存在することはもはや常識です。

そこで今回は労働組合の立場から、学校だけでなく、職場でのパワハラ・セクハラも含めた「いじめ」について考えてみようと思います。また学校でのいじめや職場でパワハラ、セクハラの被害者になったらどう対処するかも説明します。

学校と職場に共通するいじめの構造

「いじめ」(ここでは職場でのパワハラ・セクハラ等もいじめとして定義します)が起こる背景構造は、実は学校と職場では共通しています。

いじめが起こる場所は学校なら学級(クラス)、職場なら店舗や支店、部署など、固定化された狭い集団、つまり毎日同じ人と顔を合わせるような環境の中で起こります。こうした環境の中で起こるいじめの構造は次の7つです。

① 閉鎖的な空間である

外部の人がその集団に自由に出入りすることが困難。また人の移動がほとんどないので、集団内の情報が外部に出にくい。また集団のメンバーにも外部の情報等が入ってこない。職場よりも学校のほうがこの傾向が強いです。つまり「集団の閉鎖性」が「いじめ」を見えなくする原因となります。

②  集団内に上下関係が存在する

学校なら生徒間のスクールカースト、職場なら上司と部下、先輩と後輩などになります。集団内で何らかの力関係が存在すれば、上下関係を利用した「いじめ」が起こる可能性があります。また上下関係があれば、いじめの現場を目撃しても自己保身からそれを黙認する人も現れます。

③ その集団から容易に逃げられない

学級内でいじめの被害者になった場合、そこから逃げるには不登校になるか、転校するしか方法はありません。職場なら別の会社に転職するか部署を変わることが必要です。つまり問題のある学級や職場から容易に逃げられない状況が存在することです。

しかもどんなに嫌でも、被害者にとっては学校生活を送るため、仕事をするためそこに毎日通学・通勤せざるを得ないという義務(強制力)があります。

④ 途中で集団メンバーの入れ替わりがほとんどない

学級ならクラス替え、職場なら人事異動がないと、その集団メンバーの入れ替わりはありません。

学校なら年に一度はクラス替えがあるので加害者とは別のクラスになり、人間関係を再構築するチャンスがありますが、職場だと人事異動は数年に一回あればよく、中小企業なら加害者が上司や先輩だと完全に離れるのは困難です。

つまりいじめの被害者にとっては、長期間それに耐えねばならないという状況があり、肉体的かつ精神的に追いつめられる可能性があります。

⑤ 問題が発生しても、隠ぺいが容易

学校や職場は閉鎖的な空間なので、上級管理者の手にかかれば隠ぺいは容易で、いじめを「なかったことにする」のは簡単です。

学校や職場内で、もし不祥事が起こった場合、責任者(学校なら校長や教育委員会。職場なら会社の経営者や幹部社員)が最も恐れるのが、そうした「悪い情報」が外部に流出・拡散されることです。なので外部への拡散を恐れる責任者により秘密裏に処理され、隠ぺいされるケースは実際多いです。

以前フジテレビの女性アナウンサーへの性加害事件も週刊文春が報道するまでは、外部にはまったく知られていなかったですね。今回の中学生や高校生のいじめ暴力動画も、もしSNSで拡散されなかったら誰にも知られず、このように大きな問題にはならなかったと思います。

⑥ 加害者の責任追及が曖昧になりやすい

テレビなどで、いじめ暴行動画が拡散された学校を管轄する教育委員会が謝罪する映像が流れていますが、毎度のことながら ” いじめかどうかは今後調査する ”  ” 関係機関と連携し指導を徹底する ” という説明に終始してます。

こうした謝罪姿勢を見ると、加害者の責任はどうなのか? が完全に後回しにされていますね。教育委員会の人達は被害者の人権よりも組織を守ることが第一だと考えているのではとも思ってしまいます。

組織の中では圧倒的に有利なのは立場や権力が強い者です。一方、その組織・集団の中で最も立場が弱いのはいじめの被害者です。被害者の意思や要望にかかわらず、上の立場の者が勝手に判断して”幕引き”することは簡単にできます。

これは職場でパワハラやセクハラ(性加害)が発生し、被害者がユニオン(一般労働組合)に加入し団体交渉した時の、会社側の対応も同じです。謝罪すらない場合もあり、特に加害者が幹部社員などの場合は、徹底して加害者を守ろうとするケースも珍しくないです。

ここでよく使われる言い分は「パワハラやセクハラを受けた社員にもいろいろ問題がある」という論法ですね。これなど「いじめられた側にも問題がある」という論理とまったく同じです。

⑦ いじめを解決する即効性のある手段がない

現在、職場内にはパワハラやセクハラの相談窓口を設置することが法律で義務付けられています。しかし現状これが効果的に機能し、パワハラやセクハラへの抑止力になっているかというとそうではありません。

相談内容が会社上層部に筒抜けとなり、かえって隠ぺい工作が強化され、泣き寝入りせざるを得なくなるケースも多いです。

労働組合の立場で言うと、もし職場内でパワハラ・セクハラなどの被害を受けても、安易に社内の相談窓口に相談してはいけないと伝えています。

学校でもいじめ相談窓口を設けたり、いじめ相談窓口がある自治体も多いですが、被害者がそこに相談しても、すぐにいじめが収まり解決できるのか?  加害者の責任はどうなるのか? どこまで信用できるのか? というと疑問ですね。

つまり現状では、学校でも職場でも、いじめやパワハラ・セクハラが起こった時に、きちんと被害者に対応し、加害者の責任追及も含めて問題を解決する即効性のある手段がないのが問題なのです。

「抑止力」を持つことが必要

学校でのいじめを抑止するには、① 暴行・傷害や恐喝・強要などの犯罪行為が発覚した場合、警察に通報し警察に任せることを入学時に生徒・保護者に通知する。②  警備会社と契約し構内を巡回させる。 ③ 校内に監視カメラ設置 ④ 第三者的な立場のスクールロイヤー(弁護士)を置き、学校内で発生した事案について生徒からの相談等を直接受けられるようにする。  

この4つで、深刻ないじめはかなり抑止できると思います。これは生徒間のいじめ抑止だけではなく、教員の性加害(盗撮など)や暴力的指導への抑止力にもなります。しかし実現させるには予算や人員などの問題もあり、これらが早急に実現するとは思いません。

重要なのは、これらは「制度上」の抑止力であって、いじめ(職場でのパワハラ・セクハラ等を含む)の被害者自身は、現状ではほとんど「抑止力」の手段を持っていないことです。

そうした意味において、今回のいじめ暴行動画のSNSでの拡散は、いじめの加害者にとっては” こうした行為をすればSNSで拡散され、顔や本名、親兄弟の名前、住所などの個人情報を晒されるリスクがある ” と認識させ、一定の抑止力にはなったのではないでしょうか。

さすがに ” やり過ぎ ” だとは思いますが、見方を変えると、今回の事例によって、学校内で発生するいじめをどう防ぐか、どう対処するかについて文科省や教育委員会の従来の対応を含めて全国的に大きな議論が巻き起こっています。少年法の改定への議論も起こっていますね。

つまり学校教育における「いじめ」への考え方や制度が大きく変革されるきっかけとなる可能性があり、現在はその ” 過渡期 ” だと言えます。こうした過渡期には今回のような暴力動画の拡散が発生するのもやむを得ない側面があるのではないでしょうか。

次回は学校や職場でいじめ、パワハラ、セクハラなどの被害を受けたとき、その加害行為を「抑止」するための手段・考え方を説明します。

 

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